はじめに
こんにちは。mcsのT.Mです。
今回はSalesforceのマーケティングオートメーションツールである、「Account Engagement(旧 Pardot)」の基礎と効果的な活用方法・運用方法についてご紹介します。
Account Engagementは、見込み顧客の行動や属性に応じたアプローチを自動化し、リード育成や営業チームとの連携を強化するための強力なツールです。
多くの機能を有する一方で、導入したものの
- 「とりあえずメール配信はできているが、それ以上は手が回っていない……」
- 「結局Excelでリストを抽出して手作業でフォローしている」
- 「効果が出ているのかがよくわからない」
といった状況に陥っている企業も少なくありません。
本記事では、Account Engagementを単なる「メール配信ツール」に留めず
マーケティングオートメーション(MA)ツールとして成果を上げるために使う方法を、基本機能・運用設計・活用シナリオの3つの観点から具体的に解説します。
今回の記事はこんな方におすすめです。
- MAツール導入を検討中だが、導入後の運用についてイメージがわいていない
- Account Engagementを導入したものの、いまひとつ効果を出せていない
- Account Engagementの機能が使いこなせず何から着手すればよいかわからない
Account Engagementとは?
Account Engagementは、B2Bに特化したSalesforceのマーケティングオートメーションツールです。
見込み顧客の属性情報(会社規模・業種・役職など)と行動情報(メール開封・Web閲覧・フォーム送信など)をもとに、最適なタイミング・内容でのアプローチを自動化できます。
特にSalesforceとの連携がしやすく、マーケティング施策の効果が直接「商談」や「成約」などの営業活動と結びつけられる点が大きな強みです。
Account Engagementの主な機能
Account Engagementには多くの機能がありますが、ここでは代表的なものを簡潔に紹介します。
メール配信
HTMLメールやプレーンテキストメールを作成し、ターゲットとなる見込み客(プロスペクト)に対して一斉に配信できます。
A/Bテストや配信タイミングの最適化も可能です。
オートメーションルール
特定条件を満たした見込み客に対して、自動でタグ付け、スコア調整、リスト追加などを実行します。
この機能により、ターゲット分類ごとの個別の施策やリスト管理、メール配信などのフォロー施策を設計することが可能です。
ダイナミックリスト
条件に合致する見込み客をリアルタイムでリスト化します。属性や行動に応じて常に最新の状態で自動更新されるため、キャンペーン配信の対象抽出に便利です。
ランディングページ・フォーム作成
フォームを使ってリード情報を収集し、ランディングページ上に設置することで、見込み顧客の獲得を促進します。
Salesforceの取引先責任者・リードへ自動反映も可能で、セミナー参加や資料請求後のフォローアップを効率化できます。
Web行動履歴の可視化
メールリンククリックやWebページ閲覧など、対象の見込み客がいつ・どのような行動をしたかをAccount Engagement上で確認できます。
これにより、施策ごとの反応を把握し、サイト改善やキャンペーン企画に活かすことが可能です。
スコアリングとグレーディング
見込み客の行動(例:ページ閲覧、メールクリックなど)に基づいてスコアを付与し、優先度の高い見込み顧客を自動的に特定できます。
また、見込み客の職種、業界など属性に応じたグレーディングも可能です。
スコア情報とグレード情報をもとに、より重要かつホットなリードにマーケティング・営業のリソースを効率的に振り向けることができます。
Engagement Studio(シナリオ機能)
複数のステップを設定したメールシナリオを構築でき、タイミングや条件に応じて最適なメッセージ配信やデータ更新が可能です。
これにより、見込み顧客の興味・行動に沿ったナーチャリングが可能です。
例)シナリオイメージ:
初回メール配信 (件名:「【資料ダウンロード】業界別マーケティング成功事例集」)
→ リンクをクリックした場合(=興味ありと判定)
→ 2日後にフォローメール配信:「【無料セミナー案内】事例を活用した戦略の立て方」
→ セミナー登録を促す
→ リンクをクリックしなかった場合(=興味薄と判定)
→ 5日後に別テーマのメール配信:「【最新版】2025年版 業界別マーケティングトレンド」
→ 2通目も未開封だった場合
→ リストを一時保留し、次回キャンペーンの対象から除外
このように、顧客の行動に応じてメール内容や配信タイミングを柔軟に変更できるのが、Engagement Studioの強みです。
これらの機能を活用して、「見込み度合いに応じた最適な接点」を自動的に提供することで、人的リソースを割かずに見込み客のナーチャリングを効果的に行うことができます。
成果を生み出すための運用設計・活用のポイント
機能を使いこなすことより大事なこととは…?
MAツール導入時によくあるのが「すべての機能を理解してから始めよう」としてしまうことです。
しかし実際には、まず全体を網羅しようとするより、「どこで、何のために使いたいのか」を明確にすることが重要です。
まずは、「何を改善したいのか?」「何を自動化したいのか?」という課題起点で考えることで、必要な機能や設計が見えてきます。
どのようなシーンで活用すれば成果を最大化できるか
MAツールは、集客・リード獲得・ナーチャリング・営業連携といった一連のプロセスで活用可能です。
一般的には、以下のような場面で特に威力を発揮します。
- セミナー参加者へのフォローアップ
- サイト訪問者の行動に応じたコンテンツ提供
- 資料DL後の継続的な接点作り
- 営業が追いきれないリードのナーチャリング
全ての見込み顧客に同じ施策をするのではなく、自社の集客〜営業プロセスの中で、解決したいポイントを絞ったうえで
「どの状態の人に、どんなタイミングで、どんな手段でアプローチすべきか」
を明確にする必要があります。
例えば、
- 見込み度合いが低い:情報提供・認知拡大フェーズのメール施策
- 情報収集中:導入事例や比較資料の提供
- 購買検討中:営業への連携、ホットリード通知
等、顧客の状態に応じたアクションを設計します。
まずは粗い仮説でも構いません。
自社のプロセスに合ったターゲット像とそれに対するアクションを決め、仮説をもとにポイントを絞って施策を実行していくことが、成果を出す近道です。
大規模な設計よりも「小さな施策の繰り返し」
最初からAccount Engagementの機能をフル活用して全体的に最適な運用を確立しようとすると、設計が複雑になり運用が回らなくなることがあります。
また、設計時の仮定と実態がずれていた際に、手戻りが多くなり導入後の立ちあがりを遅らせてしまう要因にもなってしまいます。
まずは、
- 手作業で繰り返し行っている施策
- タイミングが命のフォローアップ
- 営業が見逃しがちなホットリード通知
といった、効果が高く手間のかかる部分から徐々に効率化していきましょう。
導入成功のカギは、運用設計と実行〜改善のサイクル
Account Engagementの豊富な機能に目が行きがちですが、大事なのは「何をしたいか」「何を改善したいか」というビジネスゴールです。
各機能はあくまでそれを達成するための手段に過ぎないので、機能に引っ張られるのではなく、やりたい施策に合わせて必要な機能を選んで使う意識が大切です。
- 「MAで解決したい課題」にフォーカスを当てる
- まずは効果が期待できる施策から小さく始める
- 効果測定と改善を繰り返しながら徐々に運用範囲を広げていく
このステップで進めることが最速で成果を生むためのコツです。
活用を加速させる!実践例5選
前述の通り、各社における課題や活用方針から施策を検討することが前提にはなりますが
活用イメージを具体的に想像していただけるよう、Account Engagementで実現可能な実践例をいくつかご紹介します。
資料請求後のフォロー
ユーザーがフォームから資料請求
→Engagement Studioでお礼メールを即時に自動配信
→3日後に関連資料を自動送付
→5日後に営業へ通知
資料請求を行った「商品に興味を持っている」見込み客に対し、追加の情報提供を必要なタイミングで実施します。
さらに営業に通知しフォローを促すことで、顧客の検討タイミングを逃さずに提案につなげることができます。
高スコアリードへの自動通知
スコアが100点を超えた見込み客を抽出
→Salesforceのステータスを”フォロー要”に自動更新
→営業に通知メール
自社の顧客のサービス認知から購買に至るまでの行動パターンに沿って、スコアリングルールを設計しておきます。
高スコアになった「購買意欲の高い」見込み客に対して営業によるフォローを実施することで、より重要な顧客に営業アクションを集中し受注率を高めます。
属性別コンテンツ配信
・ 「役職=部長以上」には導入事例集
・ 「業種=IT系」には機能比較資料
等、Engagement Studioで条件分岐を設定
顧客の属性(役職・立場や業種など)によって求めている情報は違います。
属性ごとに「最も欲しい」と思われるようなコンテンツを配信することで、反応率やCV率の向上を図ります
ウェビナー参加者へのフォローアップ
・ ウェビナー申し込みでタグ付け
・ 参加者:お礼+追加情報メール
・ 不参加者:アーカイブ視聴案内メール
ウェビナー申し込みを実施した顧客に対して、参加後のフォローアップや、不参加だった顧客へのフォロー案内を行うことで、顧客との接点を作り商談化の機会を作ります。
失注顧客へのナーチャリング
Salesforceで「失注」となったリードにタグ付け
→3か月後にフォローメール配信
→クリックしたらスコア加算+営業に通知
過去失注した顧客は、ニーズが顕在化している優良な見込み客です。
失注後にフォローを入れたり、一定期間たった後に再度アプローチすることにより、新たな提案・受注の機会につながることもあります。
そんな失注顧客へのフォローメールを自動化し、反応のあった顧客に対して営業アクションをかけることで、失注顧客を受注につなげるアプローチを行います。
まとめ
Account Engagementは単なるメール配信ツールではなく、見込み客との関係を育てて営業につなげるための、マーケティング活動の中心となるツールです。
重要なのは、「いきなりすべての機能を使いこなそう」とせず、小さな自動化やターゲットを絞ったマーケティングメールの配信からスタートし、効果検証をしながら改善・活用範囲を広げていくことです。
特にSalesforceとの連携を前提にした設計を行うことで、マーケティング活動の成果が営業活動へとつながりやすくなり、全社的な業務効率化・商談化率UPにもつながります。
「どのような見込み客を、どのタイミングで営業部門にパスするか?」という点も重要な設計ポイントになります。
- 課題と目的を明確にする
- 仮説をもとにターゲットを絞り、Account Engagementで小さな施策を実施
- 効果検証と施策改善~運用拡大
このサイクルで顧客の反応を測りながら軌道修正を重ねていくことで、Account Engagementを「ただの配信ツール」から「本格的なマーケティング基盤」へと進化させ、成果に直結する実践的なMA運用を目指していきましょう。
Account Engagementを導入したものの、機能が多すぎて使いこなせない、設定やカスタマイズが難しい、または社内リソースが不足していると感じていませんか?
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